2024.08.22 農業のこと
タネのまき方・選び方 タネを選ぶ編
秋冬野菜のタネまきシーズン真っ只中の今、これから育てる品種やタネについて知っておくことはとても大切。
実はタネの袋には、知っていると役立ついろ~んな情報が詰まっています。
選ぶ際に、どこをチェックすれば良いのか、それぞれにどんな意味があるのかについて解説いまします!
もくじ
1. タネの袋の裏をよく見てみよう!
- ここをチェック!
2. 知っておくと吉!なこんな情報
- タネの加工
- F1品種、固定品種って?
- 耐病性、抵抗性
- 早晩性
1. タネの袋の裏をよく見てみよう!
ここをチェック!
- 品種名
- 品種の特徴
- 栽培方法
タネまきから収穫まで、品種ごとの栽培ポイントが記載されています。
追肥の仕方や注意するべき害虫について書いてあることもあるので、タネをまき終わった後も袋を捨てずにとっておくと役立ちますよ! - まきどきや収穫期
実は、同じ野菜でも品種によっては、まきどきや収穫時期が異なるものもあります。
栽培する地域の適期をしっかり確認しておきましょう!
特に、秋まきの野菜は春まきのものと比べて、適期が短いので注意が必要です。
早まきするとまだ高温の時期だったり、逆に遅いと低温の時期になってしまったりと難しい環境になります。
適期ではない時期にタネをまくと、発芽率が悪くなるなど生育に悪影響がでてしまいます…。 - 発芽日数・発芽適温(地温)・生育適温
発芽までのおおよその日数と適温、その後の生育に適している温度の目安です。
ただし、「発芽適温」というのは気温のことではなく、土の温度(地温)を指しています。 - 発芽率
発芽率は「まいた粒数のうち、どれくらいの割合で芽がでるか」を表したものです。
10粒まいたうち8粒が発芽すれば、発芽率は80%ということになります。
袋に記載してある発芽率は開封前のものなので、保管方法が悪いと発芽率が落ちてしまうことがあるので注意が必要です!
開封後の種は、乾燥材などと一緒に密閉袋に入れ、冷蔵庫で保管しましょう。そして、なるべく早めに使いきるようにしましょう。
※マメ科のタネは常温での保存がオススメです。 - 有効期限
記載された発芽率(未開封)を保証する期限です。
これは「種苗法」という法律の決まりで、発芽試験をした日から一年間を有効期限にしていいということになっています。
例えば、画像のタネだと有効期限が2025年5月末なので、2024年の5月以降に検査したということになります。
そのため「有効期限=種の使用期限」ということではありません。
有効期限が過ぎたからといって、発芽しないというわけではないですが、日数が経つにつれて発芽率もおのずと落ちていきます。 - 農薬処理の有無
タネの消毒のために使用された薬剤の名前と、使用回数が記載されています。
2. 知っておくと吉!なこんな情報
上記で解説した情報以外にも、知っておくと野菜作りに役立つ情報もいくつかあります!
タネの加工
タネの中には、その周りにいろいろなコーティングが施されているものがあります。
このコーティングにも種類があって、役割があります。
- ペレット種子
小さくていびつな形をしたタネをコーティングして、まきやすくしたものです。
一度吸水した後に乾くと、外側のコーティングが堅くなって発芽しにくくなるので、発芽するまでは乾燥させないように注意しましょう。 - ネーキッド種子
発芽しやすいように、堅い皮や殻を取り除いて裸にしたタネのことです。
発芽率が高く、2日ほどで一斉に発芽します。発芽がそろいやすいのも嬉しいポイントです。 - シーダーテープ
水に溶ける性質のテープに、タネを一定間隔で入れたものです。
野菜の種類に合った株間・粒数で均等にタネが挟み込まれているので、畑やプランターにテープをのばすだけで、むらなく均等にタネまきができる優れもの。
株間を測ったり、タネを数えたりする手間が省けるので、スピーディに作業ができます。
F1品種、固定品種
タネのパッケージの中でよく目にする「〇〇交配」や「〇〇育成」という言葉。
あの言葉にも、ちゃんと意味があるのです!
- F1品種
異なる性質をもつ品種同士を交配させて作った雑種一代目のことです。
交配させた品種、それぞれの長所が入った品種になるので、生育がそろいやすい、病気に強いなどの特徴があります。
タネのパッケージには「〇〇交配」「一代交配」などと記載されています。 - 固定品種
地域で何世代にも渡って育てられ、親・子・孫と代々、形質(味や形)が変わらずに固定されてきた品種です。
そのタネを採ってまくと、親と同じような子が育ちます。
発芽が揃わなかったり、出来上がりの品質にバラつきが出ることがあります。
品種名に地方の名前が付いていたり、「〇〇育成」などと記載されているものが多いです。
耐病性、抵抗性
タネの品種名の前によく付いている、「YR」や「CR」の文字。
このアルファベットは、その品種の耐病性や抵抗性を表しています。
病気にかかりにくく、もし発病したとしても軽度で済むような性質を持つ品種を「耐病性品種」、特定の病気や害虫に強いものを「抵抗性品種」といいます。
- CR(シー アール)
Clubroot Resistanceの略。根こぶ病に抵抗のある品種に付きます。
白菜やカブなどのタネに多いです。 - YR(ワイ アール)
Yellows Resistanceの略。萎黄病(いおうびょう)に抵抗のある品種に付きます。
大根やキャベツなどのタネに多いです。
早晩性(収穫までの期間)
作物の開花や収穫に至るまでの栽培期間の長さを基準とした性質のことを「早晩性(そうばんせい)」といいます。
タネまきから収穫までの日数が短いものから順に「極早生、早生、中早生、中生、中晩生、晩生」に分けられます。
- 極早生(ごくわせ)、早生(わせ)、中早生(なかわせ)
生育期間が短く、収穫期の早いもの。 - 中生(なかて)
早生と晩生の中間のもの。 - 中晩生(なかおくて)、晩生(おくて)
収穫期の遅いもの、収穫期までの栽培期間が長いもの。
早生のような収穫までの日数が短い方が、病害虫のリスクが低いのでオススメです!
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「病気や害虫の被害が心配!」という場合はYRやCRが付いた早生の品種を選んだり、広い畑にラクにタネをまきたい場合はシーダテープのものを選んだりなど、品種だけではなく希望にあったタネを選ぶことも大切です!
今日から、タネの袋の裏もよ~くチェックしてみてくださいね。
参考資料
・藤田 智 監修『藤田 智の新・野菜づくり大全』-NHK出版
・2019年 タキイ最前線 秋種特集号