2024.03.24 農業のこと
野菜がよく育つ土を作ろう!
3月も半ばになりました。そろそろ春夏野菜作りの準備をスタートする時期ですね。
その準備の中で、一番大切といっても過言ではないのが「土づくり」。
何かと時間もかかるので、早め早めに始めるのが吉です!
土づくりを極めて、美味しく元気な野菜を作りましょう!
もくじ
0. よく育つ土の“3つ”の条件
1. 適度なすき間があって、ふかふかしている
-「 ふかふかな土 」ってどんな土?
- 団粒構造の土を作るには?
- おすすめの資材
2. pHが適切で肥料もちが良い
- 酸性土壌の調整
- おすすめの石灰資材
- アルカリ性土壌の調整
- 生えている雑草で土壌酸度が分かる⁉
- 主な野菜の適切なpH
3. 多種多様な生き物が生息している
- 土の中にはどんな生き物がいるの?
- 土壌微生物の特徴と、増えると良いこと
- 土壌微生物の増やし方
- おすすめの資材
0. よく育つ土の“3つ”の条件
野菜がよく育つ土とは、どんな土でしょうか?
ズバリ、以下の3つの条件を満たしている土が「野菜がよく育つ土」なのです!
- 適度なすき間があって、ふかふかしている
- pHが適切で肥料もちが良い
- 多種多様な生き物が生息している
では、それぞれについて解説していきます!
1. 適度なすき間があって、ふかふかしている
「 ふかふかな土 」ってどんな土?
野菜が元気に育つ理想の土は、「水はけの良さ」と「水もちの良さ」、一見矛盾しているような2つの要素を兼ね備えている土です。
簡単に言うと、必要な水分は土の中に保ちつつ、いらない水分は排水してくれる土のこと!
しばらく雨が降っていない時でも、必要な水分は土の中に保ってくれるし、逆に大雨の時には余分な水分を地下に流してくれます。
それを可能にするのが、「ふかふか」の秘密『団粒構造』です!
「団粒」とは、大きさの異なる粘土や砂などがくっついて団子状になったものをいいます。
土の中が、この「団粒」で構成されていると、団粒部分で水を保ちつつ、余分な水分は団粒と団粒のすき間を通して排水することができます。
さらに、そのすき間から空気をよく通すため通気性もアップ!
根っこが酸素を十分に吸収できるようになるので、すくすくと伸びていきます。
この「団粒構造」をもつ土こそが、「ふかふかの土」というわけです!
団粒構造の土を作るには?
土に堆肥を混ぜ込むことで、作ることができます!
土の中で団粒を作っているのは、そこに住む微生物たち。
微生物たちが枯れ葉や枯れ枝などの有機物を分解する際に、糊状の物質が発生します。
この糊状のものが、土の中の粒子同士をくっつけることで団粒が作られます。
そこで、団粒化を促すために欠かせないのが微生物の食べ物となる堆肥や腐葉土。
土に堆肥を投入することで、微生物の働きが活発になり団粒化も進んでいきます。
さらに、堆肥に含まれる繊維分自体にもすき間をつくる効果が!
微生物の働きを促進する & 土の中にすき間をつくる。
これが堆肥を入れると、土がふかふかになる秘密です!
おすすめの資材
- 牛ふん堆肥
動物性のものでは、牛ふん堆肥がおすすめ!
牛は、乾草やワラなどの粗飼料を中心に食べているので、繊維分を多く含み、土をふかふかにする効果が高いです。
含まれている繊維分は、ゆっくりと分解されていくので効果が長続きします。
豚ふんや鶏ふんに比べて肥料成分が少ないので入れすぎてしまっても、肥料焼けしにくいのも嬉しいポイント!
土がかたく締まった場所や砂質土、粘土質などの土壌改良にもってこいです。 - 腐葉土
土をふかふかにする効果が抜群の腐葉土。
ケヤキやコナラなどの広葉樹の落ち葉を、長い時間をかけて発酵させたものです。
牛ふん堆肥と同様に、肥料分はあまり含まれていませんが、その代わり繊維分が多く含まれているので、土をふかふかにしてくれます。
腐葉土を混ぜ込むことで、保水性・保肥性・排水性がアップします!
2. pHが適切で肥料もちが良い
「pH」とは、土が酸性なのかアルカリ性なのか、その度合いのことを指します!
「0~14」の数値であらわされ、pH7が中性、それより小さい値だと酸性、大きい値だとアルカリ性を意味します。
0に近づくほど酸性が強くなり、14に近づくほどアルカリ性が強くなります。
酸性土壌の調整
強い酸性の土壌には、根っこに悪影響のある物質が含まれているので、ほとんどの植物が苦手。
雨の多い日本では、カルシウムやマグネシウムなどのアルカリ分が土の中から流されやすいため、土壌が酸性に傾きがちです。
なので、土づくりをする際にアルカリ分の多い石灰資材を土に混ぜて、適切な土壌酸度になるように調整します。
ただ、栽培する野菜によって適切なpHは異なるので要注意。
ジャガイモのように、土がアルカリ性に傾くと、そうか病や粉状そうか病が出やすくなってしまう野菜もあります。
やみくもに石灰資材を入れてしまうのはなく、畑のpHをきちんと測定し、必要に応じてpHを調整していくことが大切です!
おすすめの石灰資材
- 苦土石灰
効き目が穏やかで、初心者の方でも使いやすいのが苦土石灰。
酸度の調整だけでなく、野菜の生長に欠かせない苦土(マグネシウム)の補給もできる一石二鳥な石灰資材です。
消石灰などに比べて、穏やかに効果が出てくるので障害が起きにくいのも嬉しいポイントです。 - 消石灰
素早い効き目を求めるなら、消石灰がおすすめ!
苦土石灰と比べてアルカリ性が強いので、pH調整効果が高いのが特徴です。
強い酸性の土壌を素早く調整したい人には消石灰が向いています!
石灰資材を使うときの注意点
- 堆肥を入れてから、1週間以上あいだを空ける
堆肥と石灰を同時に施してしまうと、化学反応によって堆肥に含まれるチッ素分がアンモニアガスになって逃げてしまいます。
チッ素は植物の生長になくてはならない栄養素。
せっかく入れた栄養が逃げてしまわないように、必ず1週間以上の間隔を空けてから石灰を投入しましょう!
石灰が土と馴染んで、pH調整の効果がでるまでには、1週間~10日程度が必要です。
作付けは、それ以降に行いましょう! - 土に入れたら、素早く、しっかり耕す
石灰資材は、空気や水に触れるとセメントのように固まってしまう特徴があります。
また、石灰のかたまりは肥料焼けの原因にもなります。
そのため、石灰を土に入れたら、素早くしっかり耕して土に馴染ませることが大切です!
アルカリ性土壌の調整
野菜の多くは、強い酸性を嫌いますが、実はアルカリ性の土壌も苦手。
微酸性~弱酸性のpH5.5~6.5の土を好みます!
- アルカリ性の土壌だと、どうなるの?
アルカリ性の土壌で野菜を育てると、肥料焼けを起こしやすくなったり、鉄やマンガンなどの微量要素も土に溶けだしにくくなるので、欠乏症が出やすくなったりします。
石灰資材の入れすぎが原因でアルカリ性が強くなってしまうことが多いです。
道路脇や建物の脇の畑などでは、コンクリートに含まれる石灰分が雨とともに畑に流れ込んでアルカリ性の土壌になることもあります。 - どうやって調整するの?
硫安や硫酸加里などの土を酸性にする肥料を入れたり、ホウレンソウやコマツナ、ニンジンなどの石灰や苦土を好む野菜を作って吸収させたりする方法があります。
生えている雑草で土壌酸度が分かる⁉
畑に生えている雑草からも、土壌が強い酸性なのか、湿りぎみか乾きぎみかなどを、ある程度判断することができちゃいます!
畑の中で、一番たくさん生えている雑草が何なのかよく見てみましょう!
例えば、全国どこでも生えている雑草の代表格「メヒシバ」。
この雑草は、乾燥に強く、土壌pHの影響をあまり受けないという特徴があります。
メヒシバだけが生い茂っているような畑は、「乾燥している&他の雑草も生えないほどの酸性の土壌」と判断することができます!
土壌pHと雑草の関係
酸度 | 雑草の種類 |
---|---|
強酸性(pH4.5~5.5) | スギナ、スズメノテッポウ、白クローバー |
弱酸性(pH5.5~6.0) | カタバミ、ギシギシ、オオバコ、赤クローバー |
微酸性(pH6.0~6.5) | アカザ、シロザ、カラスノエンドウ、レンゲソウ、コニシキソウ |
中性(pH6.5~7.0) | ハコベ、ホトケノザ、オドリコソウ |
ちなみに、ハコベやオオイヌノフグリ、ホトケノザなどは土壌中の有機物やチッ素分が増えてくると生えてきます。
このように、土壌酸度計がなくても、そこに茂っている雑草である程度のpHは推測することができるのです!
主な野菜の適切なpH
pH領域 | 野菜の種類 |
---|---|
5.5~6.0 (弱酸性領域) | ジャガイモ、ショウガ、サツマイモ、ニンニク |
5.5~6.5 (微~弱酸性領域) | イチゴ、キャベツ、小松菜、カブ、大根、玉ねぎ、ニンジン |
6.0~6.5 (微酸性領域) | トマト、ナス、ピーマン、キュウリ、スイカ、かぼちゃ、トウモロコシ、インゲン、 枝豆、落花生、ソラマメ、里芋、アスパラガス、白菜、ブロッコリー、ネギ |
6.5~7.5 (微酸性~中性領域) | エンドウ、ほうれん草 |
3. 多種多様な生き物が生息している
土の中にはどんな生き物がいるの?
土の中にも、いろいろな種類の生きものが暮らしています。
誰もが知っているミミズやダニの他に、目に見えないほど小さな小さな微生物たちも。
このたくさんの生きものたちは、美味しい野菜を元気に育てるために、なくてはならない存在なのです!
土の中に住んでいる生きものたちは、「土壌動物」と「土壌微生物」とに分けられます。
- 土壌動物
ミミズやトビムシ、ダニなど、私たちが実際に肉眼で見ることのできる生きもののことをいいます。
土壌動物のフンが作物の栄養源となったり、落ち葉や枯れ枝などの有機物を分解し、土をふかふかにしてくれたりします。 - 土壌微生物
肉眼では見えにくい、土の中の微小な生き物のことをいいます。
細菌や糸状菌、放射菌などの菌類や藻類などが含まれます。
土壌微生物の特徴と、増えると良いこと
特徴
微生物たちは住み家やエサを奪い合ったり、共存して増殖したりと、お互いに作用しあって生きています。
この作用が、土壌の生態系のバランスを保つ役割を果たしています。
例えば、微生物の中には、植物の生長に役立つものがいる一方で、病気を引き起こす病原菌や植物の生育を邪魔する虫など、植物にとっては「害」になる生き物もいます。
こうした生き物たちは、どんな場所にでも存在しますが、微生物の多様性が保たれていて、お互いに作用しあうことで害となる生き物が極端に増えることがなく被害も出にくくなるのです!
増えるとこんな良いことが!
- 連作障害の防止
「連作障害」とは、同じ畑で同じ科の野菜をつくり続けることによって野菜の生育が悪くなったり、病気や害虫の被害がひどくなったりする障害のことをいいます。
その原因のひとつが、特定の微生物の増加。
植物の根からは、微生物のご飯となる有機物や糖、アミノ酸などが分泌されています。
微生物たちは、そのご飯を求めて根っこの周りに集まってきます。
微生物も人間と同じで好き嫌いがあり、キャベツや大根などのアブラナ科が好きなものもいれば、トマトやジャガイモなどのナス科の野菜が好きなものもいます。
そのため、同じ科の野菜を育て続けると同じ種類の微生物ばかりが集まるようになります。
その結果、特定の「科」の野菜をターゲットとする病原菌の密度が高くなってしまい、病気や害虫による被害が発生しやすくなってしまうのです。
土壌微生物を増やすことによって病原菌に対抗できる微生物も増え、病原菌の働きを抑制することができるので、連作障害の防止にもつながります! - 「 ふかふか 」の土をつくる
『条件1』のところでも少し触れましたが、野菜がよく育つ理想の土は「団粒構造」をもつ「ふかふか」の土です。
この団粒づくりに一役買っているのが、微生物たち。
微生物が有機物を分解するときに発生する糊状の物質が、大きさの異なる粘土や砂などをくっつけて団粒がつくられます。
土の中で微生物が増えることによって、野菜が育ちやすい「ふかふかの土」ができあがります!
土壌微生物の増やし方
- 堆肥を使う
堆肥に含まれている動物のフンや枯れ葉などの有機物は、微生物のご飯になります。
ご飯となる有機物が増えれば、微生物が増加しやすい環境になり、微生物がどんどん増えていきます。
堆肥自体にも微生物が生きる生態系のバランスがとれた土壌づくりにも役立ちます。 - 雑草と土を一緒に耕す
刈り取った雑草を一緒に耕すことで、雑草が微生物のご飯になって、数が増加しやすくなります。
土の中の栄養が雑草にわたるのを防ぐこともできるため一石二鳥です! - 輪作をする
「輪作」とは、同じ土壌でさまざまな野菜を順番につくることをいいます。
ただし、野菜の種類が違っていれば良いわけではなく、つくる野菜の「科」を変えることがポイント!
例えば、ジャガイモ、ナス、トマトはどれもナス科の野菜なので、輪作では続けて作ることができません。
育てる野菜によって、土壌微生物の種類は変化していくので、ちがう科の野菜を順番につくることで、土の中の環境が偏らずに多種多様な微生物が増えて、土壌が豊かになります!
さらに、土の中の養分バランスも良くなるので連作障害防止にもつながります!
おすすめの微生物資材
- 関東農産『 甘糖くん 』
甘糖くんは、米ぬかを使用した100%植物由来の有機肥料です。
米ぬか自体にもいろいろな微生物が住んでいて、活発に働いていますが、これに「おから」をブレンドして微生物が活動しやすい水分値に調整していいます。さらに、この原料をゆっくりと時間をかけて発酵させることで多種多様な微生物を増やしていきます。
甘糖くんを土に混ぜ込むことで、土壌微生物が増加するだけでなく、さらに元気に活発に活動してくれるようになります。
その結果、土壌の団粒化を促進して、根張りがしやすい環境を作り出し、病気が起こりづらい土になるのです!
さらに、主原料の米ぬかに含まれるミネラルやアミノ酸の効果で、作物の糖度と食味もアップします。 - リサール酵産『 カルスNC-R 』
カルスNC-Rは、複合微生物資材と呼ばれる、微生物たちの力で土を良くしたり作物の生育を助けたりしてくれる「土づくり資材」です。
一番の魅力は、ラクラク簡単に良い土づくりができちゃうこと!
米ぬかや作物の残り、緑肥などの生の有機物とカルスNC-Rを、土にすき込んでたっぷりと水を与えて、1~3週間待つだけ!
カルスNC-Rに含まれる微生物が生の有機物を土の中で分解することで、土の中で堆肥が作られます。
そうすると、普通に堆肥をつくるより、たくさん良い微生物がいる土が、短期間で、簡単にできてしまうのです!
良い微生物が増えることで、作物に適した環境になり、通気性・保水性・排水性もアップします。
さらに、土が丈夫になることで肥料効果もアップするので、作物の質や収量が上がる効果も期待できます。
.
最後までご覧いただきありがとうございました!
病気や害虫に負けない、元気で美味しい野菜をつくるためには土づくりが何より大切です。
結構時間のかかる土づくり。早速、今から始めてみてはいかがでしょうか!
参考資料
・加藤哲郎『いちばんよくわかる 超図解 土と肥料入門』-家の光協会
・横山和成『図解でよくわかる 土壌微生物のきほん』-誠文堂親光社